生後最初の便で乳児のアレルギーリスクを予想できる?

生後初めての便から、乳児の将来の健康に関する重要な情報が得られる可能性のあることが報告された。新生児が生後1〜2日の間に排泄する黒緑色の胎便と呼ばれる便は、生後1年以内のI型アレルギー(以下、アレルギー)発症リスクと関連することが明らかになったという。I型アレルギーは、IgE抗体が関与するアレルギーで、アトピー性皮膚炎や気管支喘息、花粉症などを主な症状とする。ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)教授のBrett Finlay氏らによるこの研究結果は、「Cell Reports Medicine」に4月29日掲載された。

この研究は、カナダの長期健康調査であるCHILD(Canadian Healthy Infant Longitudinal Development)コホート研究に登録された乳児から集められた便を分析したもの。Finlay氏らは、950人の乳児の便の遺伝子解析を行って、腸内細菌叢の構成要素を特定した。さらに、100人(健常児37人、アレルギー児63人)を抽出して、胎便中の代謝産物(メタボライト)などの分子についての分析も行った。胎便には、胎児が胎内で摂取したり排泄したりした、皮膚細胞や羊水、代謝産物などが含まれている。この分析により、ビタミン類やアミノ酸、核酸など700種類以上に及ぶ代謝産物が検出された。

これらの代謝産物とアレルギー発症との関連を検討したところ、アレルギー持ちの乳児では、出生時の胎便中に含まれる代謝産物の多様性が有意に低いことが明らかになった。また、特定の代謝産物の減少は、腸内細菌叢の形成と成熟に重要な役割を果たす細菌群に影響を及ぼすことも判明した。このことは、腸内細菌群のコロニー形成と免疫の発達の双方が、出生時の胎便に含まれる代謝産物の影響を受けている可能性を示唆している。

今回の研究では、機械学習アルゴリズムを用いて、胎便に含まれる代謝産物の特徴と、腸内細菌群および臨床のデータを組み合わせて、乳児が1歳までにアレルギーを発症するかどうかを予測した。その結果、予測精度が76%に上ることが判明した。Finlay氏らは、「この結果は、リスクのある乳児にとっては重要な意味を持つものだ」と話している。

論文の筆頭著者で、同大学小児科のCharisse Petersen氏は、「胎便は、いわば、胎児が出生前に何に曝露したのかが分かるタイムカプセルのようなものだ。胎便には、胎内で母体から移行して蓄積したあらゆる分子が含まれている。そうした分子が、最初期段階の腸内細菌群のえさになる」と説明する。同氏はまた、「この研究から、正常な免疫系と腸内細菌叢の発達は、実際には出生前から始まっている可能性が示された。つまり、胎児が胎内でさらされるごく小さな分子が、後の健康の基礎を築く可能性があるということだ」と述べている。

責任著者の1人で、CHILDコホート研究の共同責任者でもある同大学のStuart Turvey氏は、「アレルギーのある小児は、喘息を発症するリスクも極めて高いことが明らかにされている。アレルギーのリスクを持つ小児を特定できれば、アレルギーや喘息の兆候や症状が現れる前の段階から早期介入を行うことでベネフィットが得られる可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2021年4月29日)

https://consumer.healthday.com/b-4-29-will-baby-ha...

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